関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
アイリスオーヤマ株式会社 代表取締役社長 大山健太郎氏
勉強は、夢や志を達成するためにある
 
Profile
1945年大阪府生まれ。1964年、プラスチック成型加工の大山ブロー工業所(現・アイリスオーヤマ株式会社)代表者に就任。1971年、大山ブロー工業所を法人化し、代表取締役社長に就任。翌年、宮城・大河原工場を建設。石油ショック後の経営危機を経て、1981年、消費財分野に進出。ホームセンター向けプラスチック製品のトップメーカーになった。仙台経済同友会代表幹事ほか、多数の要職に就いている。


生活用品の開発、製造、販売を行うアイリスオーヤマ株式会社の大山健太郎社長は、19歳で経営に就いて以来、常に「ユーザー目線」で発想し、ビジネスを展開してきました。社員の教育では、人柄と意欲を重視するという大山社長。その考え方について、東日本大震災のエピソードとともに語っていただきました。

ビジネスの基本は「ユーザーイン」


私は19歳の時に、大阪の実家の家業である小さなメーカーを継承し、以来約50年、経営に携わってきました。その中で学んだ大切なことは、「常にエンドユーザーの立場で発想する」ということです。
メーカーであれば、普通は自分たちが良いと思う商品を開発し、市場へ打ち出そうと考えるものですが、私が引き継いだ小さなメーカーにそのような余裕はなく、「ユーザーありき」で考えるのはごく自然なことでした。当時、メーカーとして弱小だった私たちは、当然のように大手メーカーの下請けも行いましたが、下請けの立場では小売店と店頭価格の交渉を行うことはできませんでした。自分たちの作った商品を適正な価格でユーザーにアピールしたいと考えた私は、下請けを脱却。社内に卸売の機能を備えて、店頭価格を小売店に直接交渉できる業態をつくりました。
また、当初はプラスチックでさまざまな商品を開発していましたが、「プラスチック商品」という業種に縛られることなく、広く「生活用品」という分野で金属製品、家具、紙製品、ペットフードなどを手がけるようになりました。これによって、広範囲の商品を取りそろえるドラッグストアやホームセンターなどに多くの商品をお届けできるようになり、結果として卸売機能が強化され、他に類を見ない「メーカーベンダー」という業態を確立することができたのです。
このような考え方と取り組みは、メーカー優位で商品を開発する「プロダクトアウト」ではなく、市場のニーズに対応して商品を供給する「マーケットイン」でもありません。あくまでユーザーの目線で考える「ユーザーイン」の発想こそ、アイリスオーヤマの基本姿勢です。


お客様を思う気持ちが、最高の判断につながる

2011年3月11日に起きた東日本大震災は、まさに未曾有の大災害でした。巨大地震と津波は東北地方の各地に大きな爪痕を残し、当社にも少なからぬ被害をもたらしました。しかし、そのような状況下でも当社はユーザー目線で考え、行動するという基本姿勢を貫いてきました。ユーザーが必要とする物資をいち早く届けるため、震災後すぐに宮城県、仙台市と当社を結ぶホットラインを設置。必要な物資は、連絡をいただき次第すぐに供給する仕組みを構築しました。
また震災翌日には、仙台市にある当社の子会社のホームセンターに朝早くから何百人というお客様が商品を求めて並ばれたため、店舗の修理や片付けより先に商品提供を開始。お店の中は商品が散乱しているため、青空市場のように屋外に商品を並べて販売し、レジもありませんから釣り銭が出ないよう、端数を切り落として安価で提供させていただきました。
特に感動的だったのは、震災直後には直接本社と連絡が取れなかった気仙沼の店舗です。気仙沼店では灯油を扱っていますが、店長は寒さに震えるお客様を見て、お一人様10リットルを無償提供しようと独自に判断。お客様にとても喜んでいただきました。
この行動はテレビで取り上げられ、そのインタビューで店長が「社長の決裁を取らず独断で行ったため、ひょっとしたら制裁を受けるかも知れない」と言ったため、当社に「店長をクビにしないでください」というメールが全国から数百通も届きました(笑)。もちろん制裁などはありません。むしろ「本当によくやってくれた」と本人を賞賛しました。「地元のお客様あっての私たちである」ということを、その店長は理解してくれていたのです。経営者として、こんなにうれしいことはありませんでした。


商品供給という社会責任を忘れない

現在は復旧需要がほぼ収束していますが、ホームセンターの売上は前年の5割増し。気仙沼に至っては前年比300%という伸び率です。大変ありがたいことですね。もちろん、各店はこのことを期待して行動したわけではありません。お客様を思って行動したことが、お客様の行動となって返ってきたのです。私は、企業にとって最も大切な社会責任は「供給責任を果たす」ということ、それは卸業者や取引先小売店の要求に応じるという意味ではなく、商品を必要とするユーザーの期待に応えるという意味です。この考えをそれぞれの現場で実践してくれたことを誇りに思っています。
私は今回の災害を通して、経営用語でおなじみの「三現主義(現場・現品・現状)」を徹底する重要性を強く感じました。経営者は「現場」へ足を運び、「現品」と「現状」を見なくてはなりません。これまでに述べた店舗ごとのさまざまな取り組みも、私や店長が現場で状況を見て・判断したからこそ行うことができたのです。


社会人は人柄と意欲が大切

私は普段から、社員に「知っていることとできることは違う」と言っています。たとえビジネスに関する知識が豊富にあっても、それを実行に移すことができなくては意味がありません。また、知識があればあるほどリスクのことばかり考えてしまい、いざという時、マニュアルにない判断をすることができなくなることもあります。
ユーザーの目線で考え、行動するために重要なのは、人柄と意欲です。
当社は毎年約100名の新人を採用していますが、採用試験で学生を見る際には、一に人柄、二に意欲、最後に能力を重視します。能力主義ではありません。今回の震災対応では、このような私の社員教育の方針が間違っていなかったことを、図らずも示してくれたように思います。

子どもたちの未来のために

近年は社会や経済のグローバル化が進み、変化のスピードも速くなっています。このような状況下では、当社の店長が現場で行ったような、状況に応じた思考や判断が重要になるのは言うまでもありません。学校や塾での勉強はとても大切ですが、社会へ出た後にそれを生かせるよう導くことこそ、教育者の役目ではないかと私は思います。
塾を経営する皆さんにお伝えしたいのは、「夢や志を持つことが大切。そして、それを達成するために勉強する」ということです。思えば、私自身、19歳で家業を継いでから、常に会社を大きくするため、よりユーザーに喜ばれる商品を作るために勉強してきました。塾でも、そのような考え方で教育されてはいかがでしょうか。ぜひ、皆さんには子どもたちの未来のために力を尽くしてほしいと思います。

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