関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
NPO法人 日本を美しくする会 相談役 鍵山 秀三郎氏
汚いことは悪いものを引き寄せ、 きれいなことは良いものを近づける
 
Profile
JR東日本テクノハートTESSEI おもてなし創造部 顧問 矢部 輝夫氏 1933年東京都生まれ。岐阜県立東濃高校卒業後、1953年デトロイト商会入社。同社退任後、1962年(株)ローヤル(現イエローハット)設立。東証一部上場、年商900億円の会社に育て上げた。1998年に第一線から退き、創業以来続けている「掃除」の活動を広めるため、「日本を美しくする会」創設。現在は国内外で清掃活動と講演を展開。教育問題にも深い識見を持つ。

NPO法人 日本を美しくする会

営利を求めず、特定の団体・宗教とは一切関わらず、掃除を通して自分たちの「心の荒み」と「社会の荒み」をなくすことを目指す「心磨き」の会です。


■ 必死のエネルギーが結果につながる

  上京して、自動車用品の会社に最初に勤めたのはもう60年以上前のことです。非常に厚遇され、専務まで務めましたが9年後に独立しました。その一番の理由は、「理想の会社を作りたい」という強い想いを持っていたからです。  当時の自動車用品の業界は、どこも汚く、働く人の心も荒んでいました。相手の弱みにつけ込んで、雪が降ったらタイヤチェーンの値段を10倍にするような商売を平気でしていたんです。そうした悪しき慣習を変えるには、自分が社長になるしかないと思いました。  業界がそこまで荒れていた原因の一つは、自動車のオーナーとドライバーが別だったことにあるでしょう。ドライバーは収入も少なく、粗暴粗野な人も多かった。しかし、モータリゼーションが進展すれば、すぐにオーナードライバーの時代が来て、今のままでは立ち行かなくなるということが私には見えていたのです。  とはいえ、創業期は苦労の連続でした。売れそうな商品を仕入れることができなかったからです。メーカーを何十社も回り、在庫商品を売らせてほしいとお願いしました。ようやく仕入れたハンドルカバーを携えて、自動車のあるお宅を一軒一軒自転車で回り、ハンドルにはめて見せるという営業をしていました。ほかに売るものがないから必死です。そんな地道な営業を続けた結果、最初は2、3本ずつ売り歩いていたものが、3年目には3万5000本にまで増えていました。「売りたい」というエネルギーが私にみなぎっていたからこそ、できたことだと思います。

■ 掃除が人の心を変える

 最も苦労したのは、社員の心を変えることです。そのために着目したのが掃除です。その理由は簡単。ほかに良い方法が見当たらなかったからです。とはいえ、人の心を変えることは容易ではありません。陰で嘲笑したり抵抗したりしていた人たちが自然と取り組むようになるまでに10年かかりました。  汚くても売れればいい、儲かればいいという時代に、いくら私が掃除の大切さを説いても、最初は誰も聞く耳を持ちませんでした。掃除をして業績が良くなるという保障はありません。ただ、私には確信があったんです。以前勤めていた会社でも、同じように徹底的に掃除を続けるうちに、次第に森繁久彌さん、三船敏郎さん、美空ひばりさんといった俳優やスポーツ選手などの著名人が来店されるようになったから。汚いことは悪いものを近づけ、きれいであることは良いお客様を呼ぶのです。  塾にも同じことが言えると思います。教室の掲示物は定められた位置に貼られているでしょうか。テープの痕が残っていたり古いものがいつまでも貼ってあったりしていないでしょうか。黒板はきれいに拭かれ、下にごみやチョークの粉が落ちているようなことはないでしょうか。椅子は机の下にきちんと収められているでしょうか。整理整頓された状態を基本に置くことで、指導者の心構えが伝わり、子どもたちは学習に集中できるようになるはずです。

■ “良い社風”とは何か

 私が会社を率いる上で何より大切にしたのは“社風”です。いくら売上や利益が上がっても社風が悪い会社は続きません。かつて、急成長したある不動産会社が「初任給50万円」を打ち出して話題になったことがありますが、絶対に長続きしないと思っていました。会社を永続させるのは、利益ではなく社員だからです。  良い社風の会社とは、「惻隠の情」、つまり社員の他者への思いやりの気持ちが溢れる会社です。一例を挙げましょう。マンションの自宅で宅配便のチャイムが鳴ったら、皆さんはどうされますか。私はエレベーターの入り口まで配達員を出迎えて、そこで荷物を受け取るようにしています。そうすると、配達員の方はそのままエレベーターで降りていくことができてとても助かる。穏やかな良い気分で次の荷物を届けることができ、受け取る人も気持ちが良いはずです。みんながそういうことを自然にできれば、円滑に物事が回っていきます。こういうことができる会社が、良い社風の会社です。お金を払っているから、命令する側だから何をしてもいいという態度では、みんながギスギスして雰囲気も悪くなっていきます。

■ 子どもたちに規律と秩序を

  日々子どもたちと接するオーナーの皆さんには、ぜひ規律や秩序を子どもたちに教えてあげてほしいと思います。これが守れない子どもは、どんなに勉強ができてもゆくゆく幸せにはなれないからです。  親御さんの中には、規律や秩序を守ったら個性がなくなる、創造性がなくなるという方もいるでしょう。しかしそれは、個性ではなくわがままです。本当の個性や創造性は秩序や規律の中から生まれるものです。スポーツは厳しいルールを守るからこそ上達します。試験の点数を取ること以上にルールを守ることの大切さをしっかり教える。そしてそれを塾の方針として明確に打ち出し、雰囲気を乱そうとする行為には毅然として対処していくことが重要だと思います。そういう方針に賛同してくださる親御さんの子どもたちが集まれば、自然と“塾風”も良くなり、学力も向上していくはずです。

■努力は人のためになってこそ

  もう一つ、子どもたちに教えてほしいのは、「努力は人のためになってこそはじめて努力と言える」ということです。自分のためにする努力は単なる欲望にすぎません。自分のために勉強するだけでなく、人のために努力する子どもを育てていく。自分だけ良ければいいという悪しき風潮を自分の塾で変えていくという大志を持っていただきたいと思っています。  フランチャイズビジネスの要諦は、本部の理念や志をきちんと理解してもらうことに尽きると思います。関塾に加盟するオーナーさんが、この塾が何を望み、何を実現しようとしているのかをきちんと理解していることが重要だと思います。そして地域から「あの塾に通う子どもたちはいいね」と言ってもらえるような塾、他の塾や学校から見学がくるような塾をぜひつくってください。  フランスの文学者、ルイ・アラゴン(1897?1982)は、次の言葉を残しています。「教えるとは未来を共に語ること、学ぶとは誠実を胸に刻むこと」。いくら肥料をあげても根っこがしっかりしていなければ植物は育ちません。まず子どもたちの根をしっかりと伸ばし、すくすくと葉を繁らせてあげてください。皆さんの活動は、きっとより良い社会をつくることにつながっていきます。



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