関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
スーパーホテル会長 山本梁介氏
感性、人間力が磨かれてこそ「感動」のサービスが生まれる
 
Profile
1942年大阪市生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒業後、大手繊維商社の蝶理に入社。3年後、家業の繊維会社を継いだが、1970年に廃業に追い込まれる。その後不動産事業を経て、1973年シングルマンション管理・運営事業を開始。1989年スーパーホテル設立、会長に就任。1995年、老人ホーム・シングルマンションの運営・管理会社、シティー・エステート設立、会長に就任。1996 年、社会福祉法人聖綾福祉会設立、理事長に就任。


関西を中心に104店舗を展開するスーパーホテル。従来の常識にとらわれず、「感動」を与えるホテル作りに情熱を注ぐ山本梁介会長に、ホテル経営や人材育成への考え方、次なる目標についてうかがいました。

「引き算」の発想で必要なものを徹底して追求


私どもがサービスの中で力を入れているのが、お客様に快適にお休みいただくことです。中でも寝具にはこだわりがあり、ベッドは大きめのサイズで、マットは2種類から選べます。お客様によって好みの異なる枕は、硬め、柔らかめ、高め、低めなど7種類のバリエーションをそろえ、自由に選んでもらうようにしています。自分で選んだ枕だとぐっすり休めるお客様が増え、枕へのクレームはゼロになりました。
快適にお休みいただく環境づくりのため、大阪府立大学と協同で「ぐっすり研究所」を設立し、快適な睡眠の実現を目指しています。また、水分子同士の結合を解き、低分子状態にすることで抗酸化力や保湿性を高めた「健康イオン水」の採用、天井や壁紙への珪藻土やケナフの採用など、客室を「健康部屋」にするための取り組みに力を入れています。
「安全」「清潔」「ぐっすり休める」という3つに関してはどこにも負けない自負があります。一方で、それ以外はセルフサービスを多く採用しています。要は、省くところは省き、重要な部分にだけとことんこだわること。サービスというと何でも付加しがちですが、それとは逆の「引き算」の発想です。
おかげさまで、全国104店舗の再利用率は70%、客室稼働率は89%です。2010年には、サービス産業生産性協議会が発表した顧客満足度指数で業界トップに輝きました。創業以来、顧客満足日本一を目指してきたので、嬉しかったですね。


「自律型感動人間」を育てる

スーパーホテルでは、日本一のフロントサービスをしよう、お客様の不満を取り除こう、と言っています。特に身だしなみ、接客、クリンネス、朝食の4つではお客様から不満の出ないようにしたいのです。お客様から毎月8000通のアンケートを頂戴しますが、下位20店には本部 から「ゴールド作戦チーム」を派遣し、徹底的に指導します。
ただし、不満は取り除きますが、それ以上の満足を追い求めることはしません。満足を追えば、きりがありませんから。例えば何かを無料で贈呈したとしたら、次はそれ以上でないと満足していただけなくなる。そうではなく、私どもは「感動」に軸を置いてきたのです。
感動とは、お客様に「ここまで考えてくれたの?」と思われるサービスを提供することで生まれます。そのためには自ら考え自ら行動する、つまり「自律型感動人間」を育てることが重要になります。この自律型感動人間の育成に、仕事におけるエ ネルギーの約半分をかけています。
自律型感動人間を育てる上で、重視しているのが上司と部下の会話です。例えば、自分も気づいていないような長所を上司が見つけ、明らかにすることで部下は自信を持つことができます。「自律」の基礎は自分に自信を持つことであり、この取り組みが大変重要になります。また、会社でスキルを磨くことで夢に近づいてもらえるように、仕事の目標と個人の夢を書き出してもらって います。組織と個人がWIN ?WINの関係を築けてこそ、仕事が腹に入ってくるものですから。
人を感動させる基本は、周囲への感謝の気持ちがあるかどうか。社員採用の際は、感謝する力、感動する力のある人を採用しています。ありがたいことに、感謝、感動する心はお客様に日々育ててもらえます。
またITの活用で、その方の好みなどの情報を把握できるので、初めての店舗でも別の店の常連のお客 様には、求められる前に対応できます。こうした「日常の感動」を提供することで、「第二の我が家」としてくつろいでいただきたい、そんな風に考えています。


成功するのは人間力、感性の豊かな人

大阪・船場で生まれ育った私は、父親が若くして亡くなったため25歳で家業の繊維問屋の社長を継いだんです。経営の本を読み、自分なりに生産性や数値の管理について、本の通りに実践しました。ですが、今思えば傲慢で人間力がなかったのでしょうね。社員の気持ちが離れてしまい、組合運動にも発展し、結局会社を閉じてしまいました。
こうした経験もあり、その後はどんな人が成功しているか、徹底的に分析してきました。たどりついた結論は「ツキのいい人、運のいい人が成功する」。同じことをやってうまくいく人もいれば、失敗する人もいるものです。違いはやはり運、ツキであり、それは人間力や感性、第六感が支えていると言えます。
家業を閉めた後、シングルマンションの経営で一時は成功しましたが、バブルの崩壊で一気に縮小。同業者もみんな厳しい目に遭いました。こうした苦境から這い上がる人には、やはり人間力や感性があります。「ほっておけない」といわれ、困った時に周りから力を貸してもらえる人。どうしようもなくなったときに、パッとアイデアがひらめく人。こういう人こそ、成功するタイプだと実感しましたね。社員には、運のいい人になってもらわないといけません。そのためにも自律型感動人間を目指してもらいたい、そう考えています。


アイデアで、生産性と顧客満足の両方を高める

社内提案制度には年間500〜600件の提案があります。「できそう」なものはすぐやるようにしていますよ。まずは1店舗で始め、うまくいけば広げていきます。
例えば、私どものホテルのベッドには脚がありません。これはベッドの下の掃除が問題になっていた際、どうすべきか検討していたところ、清掃スタッフから出た提案を反映したものです。コスト削減や掃除の省略につながり、お客様にも「天井が高くなっていい」と好評でした。
寄せられる提案は、試してみることが大事。やってみることで社員の提案への意欲は上がり、どんどんアイデアを出してもらえます。たとえ失敗しても怒らず、「埋蔵金になる、いずれ役に立つよ」と言って提案に感謝し、いいアイデアなら褒める、という繰り返しが重要なのです。
一般に、生産性と顧客満足度は両立できないとされていますが、アイデアは生産性を上げ、顧客満足度を上げる。これが私の経験に基づく持論です。
今後は、省資源・省エネルギーと健康をコンセプトにした「LOHAS(ロハス)」を追求します。もともと環境を意識し出したのは2001年のことです。当時、熊本県水俣市が環境にやさしいまちづくりを進めていました。ゴミの分別回収など、市民と一体になった取り組みの中で実感したのは、市民の方々の笑顔が、明るくさわやかに変わっていったこと。この感動が、スーパーホテルの方向性を「環境」へ変えるきっかけになりました。
サービス業の強みを生かし、お客様への啓蒙活動を行い、お客様と一緒にCO?削減に貢献したいという思いが今の環境への取り組みにつながっています。歯ブラシやお箸を持参されたお客様へのお菓子の贈呈や、カーボン・オフセット(※)に貢献する宿泊プランはその一例です。その結果、2011年には環境大臣賞を頂き、またエコファースト企業にも選んでいただきました。
規模の拡大や価格競争ではなく、こうしたこだわりやコンセプトを伝え、地域で1番泊まりたいホテルを目指したいですね。また、今後は海外観光客への対応にも力を入れていきたいと考えています。

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