関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
未来工業株式会社 取締役相談役 山田昭男氏
自ら選んだ目標に向かい努力を続ける“動機”を追求
 
Profile
1931年中国・上海生まれ。1945年終戦直前に帰国して岐阜県の旧制大垣中学卒業後、父・山田一彦氏が設立した「山田電線製造所」に入社、専務取締役に就任。1965年8月、故・清水昭八氏と「未来工業」を設立し、代表取締役社長となる。1991年には名古屋証券取引所市場第二部に上場。岐阜県中小企業家同友会代表理事、同会長、岐阜県電機工業会会長なども歴任し、地元の産業界にも大きく貢献した。1989年に黄綬褒章受章。
2000年に相談役に就任し、現在に至る。
岐阜県にある電気設備資材製造会社、未来工業。
ホウレンソウ禁止・年間休日日数140日など、ユニークで大胆な制度が話題を呼んでいます。1965年の創業以来赤字なし、年間売上200億円を達成している同社において、社員のやる気を引き出し業績を上げ続ける秘密とは? 
型破りな経営ポリシーを貫く創業者・山田昭男相談役にお話を伺いました


差別化戦略から生まれた数々の“へんなきまり”


未来工業には変なルールがたくさんあるから、マスコミもおもしろがってよく来るし、会社見学会(お土産付き)なんて一人2000円するのに大勢参加してもらっています。
例えばホウレンソウ(報告・連絡・相談)禁止や残業禁止、ノルマ禁止、などのルールについてよく聞かれますが、どれも理由は単純明快。
@ 差別化の徹底
A 自分の力で常に考える
この二つの経営ポリシーから派生していっただけなんですよ。
日本には大小たくさんの企業がありますが、高額所得企業はわずかに3%。その他97%の企業が、経常利益4000万も上げられないでいます。それなのに誰も反省せず、同じやり方を続けている。儲かっていない会社と同じことをしていても意味はないでしょう。反対のことをする、つまり「差別化」が重要なんです。ホウレンソウや残業などはみんなやっているけど、儲かっていないからやらない。反対のことをしているから、うちには禁止事項がいっぱいあるわけです。


「常に考える」ことが自由な発想を生む

差別化するためには、「常に自分で考える」こと。社員の自由な発想と自主性を重視しています。
創業した1965年当時から常に、競合といえばパナソニックや東芝など大手ばかり。同じことをやっていたのでは到底勝てません。どうしたら勝てるか、食べていくにはどうしたらいいかを常に考えてきました。会社を始めた当時、社員は4人しかいませんでしたので、4人みんながそれぞれ考えないと食べていけない。考えずにほかをただ真似ていては、差別化につながるアイデアなど生まれないでしょう。
例えばうちの商品に、電気スイッチを収める設備「スイッチボックス」がありますが、現在では大手を追い抜き国内トップシェアです。設備そのものは規格や素材まで国が規定しています。差別化したくても規格と違うものを作れば法律違反になってしまう。しかしそこで、「法律で決まっているから他社と同じものをつくる」のではなく、「電気工事業者の人が取り付けやすいものをつくろう」という発想からひと工夫したんです。「常に考える」ことが発想の転換、差別化につながり、大手企業にも勝つことができます。
残業禁止も、「常に考える」から派生したルールです。時間内に業務を終わらせるためには、自分で考えて工夫しないといけませんよね。1から10まで自分で考えるクセをつけるためにも、ホウレンソウはいけない。ホウレンソウの結果、上司に否定されると不満の一因になるだけでなく、自分で考えなくなります。さらに上司や会社の判断だからと責任転嫁するようになる。だからうちは減点主義ではなく加点主義。減点主義では、失敗を恐れて何もできなくなってしまいます。だから、とにかくやってみることです。やってみて失敗したら、また戻せばいい。失敗してもよくやったと誉めろ、と幹部には言っています。
ホウレンソウ禁止なので、社員が何をしているかほとんど知りません(笑)。新しい営業所をつくった、新規事業を始めた、新社長は誰かということまで事後報告ですからね。経常利益を見て、10%を超えていたら「みんな頑張ってるな」と考えることにしています。
でもその前提として、社員を信頼しています。彼らはプロですから、ある程度の判断は当然できる。そこを信頼していなかったら、任せられませんからね。


社員のやる気を引き出す“餅”を与える

金儲けをするのは誰か? 間違いなく社長ではない。利益を上げようと思えば、全社員に「この会社で頑張ろう」と思わせなければ。年間休日日数140日、育児休暇は3年、定年は70
歳で減給なし……。それからうちにはパートや契約社員はいません。人件費削減でコストダウンだと言いますが、これで儲かっている会社がありますか? 第一、人をコスト扱いしちゃいけない。社員800人が全員正社員だから、もちろん退職金も支給されます。
これらは社員に頑張ってもらうための“餅(インセンティブ)”。社員に頑張ってもらうためには、経営者は社員を感動させる経営をしないといけない。それなりの待遇をすれば、しっかり働こうという気持ちになるんです。
ほかにも、一回企画・提案するだけで500円、採用されると最高3万円の報賞金が出る「提案制度」というのもあります。結果がどうあれ、挑戦したことを誉めるのが大切なんです。社員旅行でクイズ50問に正解すると「半年間の有給休暇」という企画もそうです。もともとうちは有給休暇を使えば半年間休めるので、正解すれば丸一年休暇になると話題になりました。結局、予定していたエジプトの政情不安で旅行自体が中止になったので、費用1億円は東日本大震災の被災地に寄付しました。
ちなみに現在、未来工業には社員のクラブが約80団体あります。3名集まれば成立で、活動費として会社から年間12万円を支給しています。
これも“餅”ですね。どうやって社員の不満を消し、喜んで働いてもらうかを考えた結果、生まれたものです。


その場の採算ではなくお客さんが一番喜ぶことを

最終的には社員が喜んで働くことができ、お客さんに喜んでもらうことが一番大切です。
こんなことがありました。20日ほどある正月休みに社員旅行を予定していたのですが、その間のお客さんの対応はどうするかが問題になりました。「営業は残る」という声もありましたが、それでは差別化にならない。そこで、必要なら倉庫を開けてもらえるように、合い鍵を3000個作ってお客さんに渡したんです。フタを開けてみれば鍵を利用したのは3社だけ。ほかは事前に購入されたので、結果としては売上が上がっただけでなく休暇もとれたわけです。これがうちの差別化であり、お客さん第一の姿勢です。
お客さん第一と言いつつ、多くの企業は自分第一。例えば、飲食店などでも多くの店ではマニュアルが第一です。お客さんにとってベストなサービスとは、現場をよく知る社員が自由な発想で働いて初めて提供できるもの。社長の役目は、社員が自由に働ける制度を整えることだと考えています。
塾といえども商売です。たとえその場の採算には合わなくても、どうすれば塾にとってのお客さんである子どもたちが喜ぶのかを考えること。横並びではなく教室それぞれの特色を出すことが大切ではないでしょうか。そのためにも、常に自分自身を反省し、考え続けなければならないと思います。

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