関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
カトープレジャーグループ 代表取締役兼CEO 加藤 友康
顧客と共にリスクを背負い、信頼の上に努力を重ねる
 

ホテル、フードサービス、ラグジュアリーリゾート、公共リゾートなどレジャー事業全般における総合的なプロデュースと
新業態開発を行うカトープレジャーグループ。22歳で事業を引き継ぎ、一代で年商規模220億円、総従業員数3100人の企業に成長させた
加藤友康氏にその経営哲学をうかがいます。

Profile

1965年大阪府出身。ホテル、フードサービス、スパ、ラグジュアリーリゾート、公共リゾート、エンタテインメントなどあらゆるレジャー事業開発を行うプロデュース企業、カトープレジャーグループの代表取締役兼CEO。総従業員数3,100名、年間500万人に及ぶ顧客を動員、数多くの企業とのパートナーシップを実現している。代表的な事業として、「熱海 ふふ」「箱根・翠松園」「麺匠の心つくし つるとんたん」「Kafuu Resort Fuchaku CONDO・HOTEL」「i+Land nagasaki」などがある。「ふふ 河口湖」が2018年10月に開業し、今後 奈良・日光・京都・強羅へ展開予定。
世界一楽しい仕事をしよう!

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KPG METHOD(ワニブックス)


ビジネスの基礎からリーダーのあり方、最良のサービスを生み出すために欠かせない人材育成のノウハウまでを伝授する一冊。


■収益まで責任を負う独自のトータルプロデュース
  現在のレジャー産業における「トータルプロデュース」という仕事の原点となったのは、1989(昭和64)年に、24歳の時に携わった高級ディスコのプロデュース。こうした空間プロデュースを手掛けていたデザイナーたちは、顧客の資金を預かって仕事をしていましたが、最初は資金面でリスクを背負わなくていい仕事とはなんて魅力的なのだろうと思いました。しかし、トレンドやデザイン性ばかりを重視して資金を使う彼らの仕事を目の当たりにして、顧客に対する誠実さに欠けた対応に驚き、逆に「他人の資金だからこそ、命懸けで自分のもの以上に大切にしなければいけない」と実感しました。また、プランニングだけでは、この事業は成功しないということを確信しました。
 この経験が、カトープレジャーグループ(以下、KPG)独自の「トータルプロデュース」の基本となっています。私たちが考えるトータルプロデュースとは、空間のプランニングのみにとどまらず、マーケティングからコンセプトワーク、プランニング、従業員のオペレーションまでを一貫して行うこと。なかでも、レジャー事業の成否を分けるのはオペレーションだと考えています。トレンドのデザインを取り入れたレストランでも、従業員のサービスが伴っていなければ、お客様には来ていただけません。あるいはトレンドが過ぎてお客様が離れてしまうでしょう。長くお客様に喜んでいただけるどうかは、従業員のオペレーションにかかっています。
 もちろん、最初から成功するとは思っていませんでしたし、信頼関係もありませんでした。他の空間プロデューサーやコンサルタントとの差別化に成功した要因は、トータルプロデュースというスタイルに加え、 収益≠ワで責任を取るという姿勢でした。つまり、赤字のリスクをも覚悟し顧客とともにリスクを背負うことで、顧客の信頼を得られたと思います。
 1998(平成10)年に初めてプロデュースした公共施設が大阪府岸和田市「牛滝温泉 いよやかの郷」。その後もいくつかの公共事業を手掛けましたが、いずれもリスクを請け負わない仕事はしていません。業態に関わらず、手がけた施設のほとんどは撤退することなく、クライアント様との信頼関係を守り続けています。

■父から受け継いだ人を大切にする心
 KPGの前身は、1962(昭和37)年に父が創業した婦人服を扱う加藤商事株式会社でした。私が22歳の時に父が急逝し、経営のことは何も分からないまま事業を継ぐことになりました。その頃、会社は20億円もの有利子負債を抱えており、当時の私は返済に必死でした。
 経営者として父から受け継いだのは、何より人を大切にする心。そしてお客様やお取引先様に対して「義に徹し、恩に報いる」という姿勢でした。これらはグループの理念とすべく明文化し、「KPGマインド」として社員に共有され受け継がれています。
 一方、私自身が事業を継承した時に苦労した経験から、リーダー育成のための制度確立に注力してきました。2012年には「加藤友康塾」を開き、リーダー志向の社員を育てるためにさまざまな講義を行っています。
 採用に際しても「KPGマインド」をはじめとする心の価値観≠ヘ重要です。この心の価値観≠共有できなければ、お互い不幸になってしまいます。KPGの業態は多岐にわたりますから、多様性の中でチャレンジしたい方が多く集まっています。
 ただ、観光業界全体としては、他業界と同じく人材不足は課題です。2018年はCSRの一環として、琉球大学様より委託非常勤講師を拝命し、観光や宿泊事業を学ぶ産学連携による寄附講座を開講しました。人員確保だけではなく、次世代の観光産業における担い手を育成できる企業として成長したいと考えています。

■リーダーとは夢を持ちポジティブに努力できる人
 加藤友康塾にはリーダーが果たすべき責任、求められる思考や行動についてまとめた「加藤友康塾十則」がありますが、やはり経営者やリーダーとなる人に必要なのはまず夢を持つこと。その夢に向かってポジティブに努力を続けられることだと考えています。
 私自身、グループの総称を「カトープレジャーグループ」に変更した24歳の頃には、レジャー業界に幅広く事業展開したいという夢を持っており、トータルプロデュースという言葉を用い、事業戦略やコンセプトなど確かなビジョンを持っていました。負債の返済のために日々奮闘する中でも、揺るぎない夢を持ち、必ず達成するという強い決意で目標に向かって歩んできました。目標を一つずつ達成し、夢を実現していく喜びを実感することは、次の成長へとつながります。ですから今の私は、「夢の中にいる」ような幸せを日々感じていると、自信を持って申し上げられます。

■さらなる新業態開発と既存事業の進化へ
  2018年4月、長崎市から移譲された「長崎温泉 やすらぎ伊王島」をエンターテインメントリゾート「i+Land nagasaki」としてリニューアルオープンしました。宿泊施設やレストラン、温泉のほか、体験型マルチメディア・ナイトウォーク「ISLAND LUMINA」を日本初導入。幅広い世代、層のお客様に楽しんでいただける施設です。
 また、スモールラグジュアリーリゾートとして、2007年に開業した「熱海 ふふ」をシリーズ展開させ、第2弾「ふふ 河口湖」を2018年10月に開業しました。ほかにも、熱海市には「GLAMDAY VILLA UMITO MORITO KAZE 海森風」を2017年に開業し、1日1組限定、お客様が望むスタイルでご滞在いただける新しいバケーションレンタルをご提案しています。
 これらに共通しているのは、その土地が持つ「地の力」を大切にしている点。雄大な自然に溶け込みながら、ラグジュアリーな空間と最高のホスピタリティを感じていただくのみならず、地域の雇用促進に寄与し地域経済の活性化につながる施設を目指しています。

■世界一楽しい仕事をしよう
 お客様に「感動」と「喜び」を提供できる幸せを感じながら対価をいただく、プロデュース事業は、私にとって「世界一楽しい仕事」です。さらには信頼できる多くのスタッフ、家族や公私共に支えてくれる友人に囲まれながら働けることに、毎日喜びを感じています。
 学習塾という素晴らしい仕事に携わる皆さんもまた、「世界一楽しい仕事をする」という思いで夢を実現していただきたいと思います。


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