関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
株式会社 吉寿社 相談役 神吉 武司さんに聞く
ぶれない座標軸を胸に 大局的に世界をとらえる視点を
 

産経新聞社専務取締役大阪代表齋藤勉さんに聞くProfile 1941年徳島県生まれ。1964年、大阪にて菓子卸業の店を創業。そ の後、小売にも進出し「お菓子のデパートよしや」を展開。現在、直営 店・フランチャイズ店合わせて100店舗以上を運営する。業界No.1 の利益率と在庫回転率の実現、また社員のモチベーション向上に つながる斬新な企画や報奨制度が他業界からも広く注目を集める。
著書は『早起き力(PHP研究所)』『商いのこころ(元就出版者)』ほか。

『たった一人の熱狂』増補完全版


何よりもまず 社員の幸福を願う
「願従業者之幸福祈」と書かれた掛け
軸。毎日これを唱えているという神吉
武司氏。清掃の行き届いた社内の随
所に、創業者のこだわりと哲学が。

1965(昭和39)年に大阪で創業した菓子の卸、流通商社「よしや」。日本初のお菓子のフランチャイズを考案し、関西一円に展開。
創業以来50年近く黒字を維持し、業界トップを走り続けてきた経営ノウハウとは?
「社員の幸福」を追求した大胆な経営手法で知られる創業者、神吉武司氏にお話をうかがいました。

■早起き力で差をつけろ

  創業当時、菓子の卸・流通業者はすでにたくさんあって、うちは後発だったんです。競争に勝つため、私が最初に決めたのは「どこよりも早く店を開けること」「ほかよりも早く決済をすること」「5年間は年中無休で働くこと」。つまりは「人よりたくさん働く」ということでした。
 特に早起きは「三文の徳」どころか「一生の徳」だと思っています。ヒト・モノ・カネの潤沢な大手企業に中小企業が勝つためには、一日を早くスタートすることです。同じ3時間働くにしても、一日働いて疲れている夜と朝では、仕事の質が異なります。電話もかかってこないので、集中して100%時間を有効に使えますね。道路は空いているから、ストレスなく安全に運転できる。整理整頓、掃除の時間もつくれる。早く起きるには早く寝ますから、健康で働ける。そして、早く出勤した分、夜早く帰宅すれば家族と過ごす時間も増え、家庭生活が充実していれば仕事にも力が入ります。
 つまり早起きは、コストをかけずに誰でもすぐ実践できる“成功の秘訣”なのです。一日当たり3時間でも一ヶ月、一年と続けると差は歴然。これまでも、月次決算で赤字が出ると出勤時間を30分早め、それでも回復しなければさらに30分早めて働きました。こうすることで、ほとんどの場合は業績が回復します。経営者が早起き、早朝出勤を習慣化できている企業は不況知らずだと確信しています。実際、創業当時周辺に20社はあった同業者のなかで、現在も生き残っているのはうちだけですから。

■トイレの美しさ =会社と社員の品位

  それからもう一つ、良い会社の基本は掃除・整理整頓だと思います。成功している企業は、当然のように掃除が行き届いていて職場が美しいのです。逆に言えば、倒産する会社は、乱雑で汚れている場合が多い。私が尊敬する多くの経営者も掃除の重要性を説いており、社員が気持ちよく働ける環境をつくろうと、私も毎朝まだ誰もいない倉庫を掃除します。
 そして、本当に清掃が行き届いているかどうかを決定づける場所がトイレ。本来汚れやすく、昔から不浄だと考えられてきたトイレが美しいなら、ほかの場所も間違いなく美しからです。そして、掃除は職場を美しくするだけでなく、何よりそこで働く社員の心を磨き、品格を育てると考えています。

■ 誰よりもまず経営者が率先垂範を

 早起きでも掃除でも、これらを風土や文化として社員に定着させるのは容易なことではありません。大企業より中小企業の方がむしろ難しいと思っています。大きな流れに合わせようとするのが大企業の社員だとすると、中小企業の社員は個々の意思で動こうとする。だからこそ、会社としての方針や理念をきちんと示し、社員にも実践してもらおうとするならば、社長が率先してお手本を見せることです。率先して早く出勤し、率先して掃除をする。私の感覚だと、従業員30人程度の中小企業の社長なら社員の1・5倍は働くべきです。そうした経営者の姿を見て初めて、社員は動いてくれるものです。
 海では「エビでタイを釣る」けれども、社会では逆。100の努力が、そのまま100実ることはありません。重要なのはそれらの活動や取り組みを“続ける”ことです。まずは7年続けると成果が表れます。10年以上続ければ、二乗になって実りを見せてくれるでしょう。

■ 社員が幸せでない企業に成功はない

 経営者として何より大切にしているのは“社員の幸福”です。取引先よりも何よりも、まず社員を第一に考えられない会社は長続きしません。さまざまなプレゼントや報奨制度は、その思いの現れです。金の延べ棒が当たるあみだくじ大会、勤続年数順に贈られる海外旅行、30名に当たる1万円分のお買い物ツアー、全員に配るお菓子一杯詰め合わせセットなど、できるだけ公平に多くの社員が該当するよう、たくさんの企画を立てています。こうした企画は、社員だけでなく家族にも喜んでもらえます。「お母さんの会社はいい会社なんや」「お父さん頑張って働かなあかんで」と家族が気持ちよく応援してくれる。それが社員のモチベーション向上につながるのです。
 こうして、利益の6分の1を社員に還元しているとお話すると、よくいろいろな方に驚かれますが、社員の力があってこその利益。それを社員に還元するのはごく自然なことです。
 モノの力は偉大です。一年間のプレゼントや報奨の予定はみんなに公表していますから、業績が良かろうと悪かろうと必ず行います。1年も経てば忘れられちゃうから、定期的に何か考えないと(笑)。去年より今年、今年より来年、どうすればさらに喜んでもらえるかを考えるのは楽しいですよ。
 学習塾も同じではないでしょうか。会社では社員を喜ばせることが大切なように、子どもに喜びを与えることが大切だと思います。仮に「10」の力を持っている生徒がいるとして、通塾することや学ぶことに喜びを感じてもらえたら、「12」でも「15」でも力を発揮することができるかもしれない。イベントを催してもいいし、小さなプレゼントでもいいんです。大人も子どもも動機付けは重要。マイナスの感情や怒りの言葉には毒がありますが、喜びが人間力を育てるのです。

■ すべての人・モノに感謝を

 また私は、「社員の幸福は社会貢献につながる」と考えています。社員が熱意をもって働いてくれるおかげで会社の業績が上がり、優良企業として税金をおさめることができます。それが、ひいては社会貢献につながるということです。商売は、私たちの力だけでは成り立たない。お菓子を製造する人、運送する人、店頭で売る人、また会社周辺地域の皆さんなど、たくさんの人の力があって商売ができているのですから、すべての人に“感謝”を忘れてはいけません。
 うちに届いたお菓子は、お嫁に来たようなものですから、丁寧に大切に店舗に届けます。人だけでなく、モノであっても「ありがとう」と心を込めて扱えば喜ぶんです。敷地内にある慰霊碑では、社員とその家族だけでなく、取引先、それから私たちをどこかで支えてくださっている目に見えない多くの方々を祀っています。あって当然なもの、当然のことなど何一つない。周囲の人・モノに感謝する心がすべての原点だと思います。 



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