関塾ひらく「インタビュー」 各界で活躍する著名人に教育や経営をテーマとしたお話を伺いました。
株式会社武蔵野 代表取締役社長 小山 昇氏
互いを知り価値観を共有してこそ、組織は強くなる
 
Profile
1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1977 年に(株)ベリーを設立し社長に就任、1989年に現職に就任。 1990年に株式会社ダスキンの顧問に就任、1992年に退任し現在に至る。全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。現在500社以上の会員企業を指導し、全国で年間240回以上のセミナーを開催している。株式会社武蔵野は2000年日本経営品質賞、2010年国内初日本経営品質賞2度目の受賞。『仕事ができる人の心得』(阪急コミュニケーションズ)など著書多数。
ダスキンの代理店などを基盤に事業展開する株式会社武蔵野。
赤字と“ダメ社員”を抱えていた会社を優良企業へと導いたカリスマ社長として名を馳せる小山昇社長。年間240回以上のセミナーや研修をこなす傍ら、年間50回以上になる社員との酒宴も欠かさないという。コミュニケーションの達人が持つ、常識にとらわれない経営哲学について伺いました。


幹部半分が辞職 立て直しからのスタート


大学卒業後に株式会社武蔵野に入社しましたが、社長とけんかしてすぐに退社してしまったんです。何しろあの頃は27歳の生意気盛りでしたからね。その後、起業したものの倒産。ダスキンを経て1977年に株式会社ベリーを設立しました。約5年後、ベリーが増益・増収していたところへ、武蔵野の創業者で当時の社長から「経営を手伝ってほしい」と声が掛かったのです。創業者の病気が理由だったのですが、その時私が出した条件が二つありました。一つは回復して復帰したら辞めさせてもらうこと。もう一つは、能力が分からない半年間は無給で働く代わりに、半年後には辞めた時の2倍欲しいということです。実際、半年後には約束通り2倍の給料が払われました。
1987年2月22日、創業者が亡くなる2日前に奥様から「武蔵野の社長をやってほしい」と電話がありました。私はその時ベリーの社長もしていたので正直迷いましたが、こうも思いました。今日の私があるのは、武蔵野で好き放題やらせてもらって勉強させてもらったからだと。
そしてベリーを売却し、専務を経て一年後に社長に就任することになったのです。
ところが、就任前後から問題は山積していました。赤字な上に社内不正も多く、まずは会社の立て直しから着手する必要がありました。何より、幹部の半分がある日何の前触れもなく辞職してしまったから、人がいない。そこで、いきなりアルバイトを社員登用して部長に、中卒社員を課長に任命して……。その時思いましたね、社員が半分減っても会社は潰れないって(笑)。


真似は最高の創造 小さな一番を積み重ねて成長を続ける

会社を立て直すには、何かで評価されて一番になる必要があると思いました。なぜ一番か。「日本で一番高い山は富士山、じゃあ二番は?」という問いに、ほとんどの人が答えられません。小さなことでもいいから、一番にならないと世間に認めてもらえないと考えたからです。
そこで1997年、日本経営品質賞(※)への申請準備に取り組み始めました。幹部16名のうち正社員はたった2名。残りはアルバイトでしたし、役員は全員アルバイト上がりでした。中には元・地域一番の暴走族もいましたが、その多くは、能力があるのにこれまで誰にも認めてもらえなかった人間なんです。彼らを含め、社員を変えるためにも必要な取り組みだったと思います。
「環境整備」「IT化」による経営品質の向上に取り組み、結果として2000年度に「日本経営品質賞」を受賞。2010年度には同賞創設以来唯一である、二度目の受賞を果たしました。受賞できたのは、その分野で成功している会社に勉強させてもらって真似をしたから。「現地
(会社)見学会」もその一つです。みんなで議論しても0を1にすることは困難ですが、1を2や3にすることはできますよね。真似は最高の創造。愚直に真似をして、3年も続けたらそれはもうオリジナルです。実際、現地見学会には、有料にもかかわらず、すでに国内外から1万6000人が参加しています。
チャレンジして一番よかったと思うのは、社員が成長したことですね。評価され優良企業としてベンチマーキング先になれば、自然と世間から注目を集める。期待されると人は頑張るから、また評価されるわけです。
多くの人は、失敗を恐れて初めてのことにチャレンジしませんが、成長するには失敗が大切なのです。二度の受賞の裏で4度落選していますが、申請報告書に対する評価レポートの改善点の中から、ポイントを絞り込んで改善し、チャレンジを続けてきました。つまり、小さな子どもと同様、たくさんのチャレンジと失敗、小さな一番を積み重ねることで成長してきたということです。

※「卓越した経営の仕組み」を有する企業の表彰を目的に創設された表彰制度。日本経営品質賞と、同賞に至る段階として経営革新推進賞、経営革新奨励賞がある


組織は同じ価値観を共有するほど強い

私は、社長就任以来25年間、勉強会を続けています。ポイントは、勤務時間中に実施して、とにかく参加させること。参加すると500円が支給されます。どんなに優秀な大学を出た人でも、25年間勉強しなければ右肩下がりですが、どんな出来損ないも勉強し続ければその差は歴然です。
では勉強会をする上で、優秀な社長とはどんな社長か。参加した社員に「社長また同じこと言ってる」と言わせた社長です。現在、正社員・アルバイト・パート含めて700名の組織で、社長就任当時からの在籍者はたった4名。ということは、同じことを何度も何度も繰り返さないと、文化として浸透しないんですよ。だから勉強会では、『経営計画書』『仕事ができる人の心得』たった二つのテキストしか使用しません。逆に、教えることが毎回違う社長は、一貫性がなく優秀とは言えないのです。
塾では、先生のレベルが均一でないと保護者や生徒から満足を得られませんよね。同様に、例えばお客様の問い合わせに対して、誰でも均一な返答ができなければいけません。均一であること、つまり、全員が同じ価値観を持つ組織は強い。価値観を共有するには、時間と場所を共有する必要があります。だから私の採用基準は、男性ならお酒が飲める人、バカができる人、と単純明快です(笑)。
武蔵野には飲み会手当というものがあって、部長になれば部下と一対一、部全体での飲み会は必須です。
時間をとって部下と対話をするのも彼らの仕事ですし、お酒の場で生まれる“不純なエネルギー”が仕事に生きることも少なくありません。
私はこの“不純なエネルギー”も大切にしています。以前iPadを社内に支給したとき、まず「私用で使え」と言いました。最新のIT機器などは、考えるよりとにかく触れることが慣れるコツであって、積極的に触らせるためには、動機はむしろ不純でないといけないんですよ。大切なのは結果を出すことですから。
経営において結果を出すには、コストとマンパワーを使うべきタイミングと対象を見誤らないこと。例えば、社員に「増収減益」を目指せと言っていますが、売れる商品をもっと売るための販促費用は使うべきだからです。業種によって異なりますが、良い点を伸ばしさらに満足度を高めるのか、不満足要因を探って重点的に改善するのか。的確な判断をするためには、やはり業績の振り返りを怠らず、PDCAを効率よく回すことが重要です。


コミュニケーションとは相手を具体的に知ること

私の2013年は、セミナーや研修が180日以上、“社長と飲み歩き会”など社員との飲み会が66日以上。飲み会の席では、まずみんなの話をじっくり聞いて、一人ひとりにコメントすることにしています。だから配偶者の名前もみんな覚えているし、誰より社員の弱みや恋愛事情に詳しい(笑)。それだけ社員に関心があるし、大切に思っているということです。コミュニケーションとは、単なる会話ではなく感情のやり取りであり、具体的に相手について知っているか。社員に「小山と働いてよかった」と思ってもらえるような社長でありたいと思っています。

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